糖尿病網膜症
「糖尿病網膜症」とは、糖尿病によって網膜の血管がダメージをうけ、網膜の血流が悪くなり酸素が行き渡らなくなった状態です。①単純網膜症(網膜出血や軽度のむくみ)、②増殖前網膜症(血管の異常、網膜の虚血が進行)、③増殖網膜症(悪性の血管が発生、硝子体出血や網膜剥離など)と進行していきます。また進行すると緑内障を併発することもあります。治療の大前提は安定した血糖コントロールであり、①の段階では血糖が落ちつけば網膜症も改善することがあります。②以降に網膜症が進行する場合は下記の眼科治療を行います。
「糖尿病網膜症」のうち、①単純網膜症の場合は、ほとんどが無症状です。進行すると、かすみや歪み、チラチラと虫や影が飛ぶ、といった症状がでてきます。無症状で進行し、③増殖網膜症の網膜剥離になり突然視野欠損を自覚するような経過もあります。糖尿病の方は無症状でも定期的な眼底検査が必須です。
<単純網膜症>
抗VEGF抗体の硝子体内注射
②③の糖尿病網膜症で、悪性の血管を潰す薬剤(抗VEGF抗体)を眼内に注射します。眼に注射、と聞くと恐ろしく感じますが、しっかり点眼麻酔を行うので痛みはほとんど無く、外来にて5分程で終わります。主に網膜のむくみ(黄斑浮腫)を改善するために使用します。黄斑浮腫が改善すると視力も多少改善する事が多いですが、薬剤の効果は永続的では無いため、数ヶ月毎に繰り返し投与する方もいます。その間にレーザー治療や血糖コントロールなど、複合的に治療を進めていきます。また、下記の硝子体手術の前処置として行う場合もあります。
網膜光凝固療術(レーザー治療)
虚血網膜を放置すると悪性の血管が生えてくるため、血流に改善が見込めない場合は、虚血網膜自体をレーザーで焼いてしまいます。そうすることで悪性の血管を退縮させ、黄斑浮腫の改善や、将来的な網膜症進行の予防、を目指します。1回の処置は10~20分ほどですが、3,4回繰り返す事もあります。また、下記の硝子体手術の前処置として行う場合もあります。
硝子体手術
③増殖網膜症となり、硝子体出血を繰り返す場合や網膜剥離を来した場合などに手術を行います。ボールペン先ほどの極小の機械を眼内に挿入し、出血を切除したりレーザー治療を行ったりします。局所麻酔(球後麻酔)にて1時間ほどの手術ですが、眼科では大がかりな手術となり、当院のような総合病院で血圧や血糖なども管理しながら数日入院で経過を診ると安心です。また術後にうつ伏せでの安静経過観察が必要なる事もあります。
<増殖網膜症>