重症筋無力症
神経から筋肉への信号の伝達は、神経と筋肉の接合部(神経筋接合部)でなされます。神経からアセチルコリンを放出し、筋肉の受容体で受け取ります。「重症筋無力症」は、この受容体を攻撃する抗体(抗アセチルコリンレセプター《ACHR》抗体)が体内で作られ、受容体が破壊されることにより、筋収縮がうまくいかなくなり、瞼が下がったり、物が二重に見えたり、あるいは筋肉を使うと異常に疲れやすくなったりする疾患です。一部にこの抗体が陰性である代わりに別の機序を持つ抗体(抗MuSK抗体)が陽性であったり、ふたつの抗体が陰性である場合もあります。診断するための検査としては、眼瞼の易疲労性試験、アイスパック試験や採血による抗体価測定、テンシロンテスト、筋肉の反復刺激試験などがあります。また「重症筋無力症」と診断されたら、胸腺腫がないかどうかを調べるための胸部MRIや他の自己免疫疾患の合併がないかの検査をしたりします。
瞼が下がる(眼瞼下垂)、物が二重に見える(複視)などの眼筋に症状が出ることが多く、眼筋のみに症状が限局している場合は「眼筋型」といいます。その他四肢の筋力低下(歯磨きの途中に休まないといけない、椅子からの立ち上がりに腕を使うなど)や、場合によっては嚥下障害(むせたり飲みこみにくい)、咀嚼で疲れる、呼吸障害(息切れ)などの症状をきたす場合もあります。眼筋以外にも症状がある場合は「全身型」と呼ばれています。最初のうちは「眼筋型」でしばらくして「全身型」に移行する場合もあります。
「眼筋型」の治療
眼瞼下垂のみでは抗コリンエステラーゼ阻害薬の投与、それで効果がない場合は少量のステロイドの投与を施行します。複視もある場合はステロイドで治療開始します。胸腺腫を合併している時は胸腺摘出術が必要となります。
「全身型」の治療
免疫グロブリン療法、ステロイド療法などを施行します。そのほかの免疫療法もあります。胸腺腫を合併する場合は胸腺摘出術を行います。