切迫早産
「切迫早産」とは早産となる危険性が高いと考えられる状態、つまり早産の一歩手前の状態のことをいいます。子宮収縮(お腹のはりや痛み)が規則的かつ頻回におこり、子宮の出口(子宮口)が開き、赤ちゃんが出てきそうな状態のことです。破水が先に起きたり、同時に起きたりすることもあります。破水とは、子宮内で羊水とともに胎児を包んでいる膜が破れて、羊水が流出している状態のことをいいます。羊水が出続ければ陣痛が起きたり、細菌に感染したり、羊水の量が減ることで赤ちゃんが圧迫されたりといったことが問題になります。また、症状がなく子宮口が開きやすい状態を「子宮頸管無力症」といいます。どんどん子宮口が開き、流産や早産になるので状況により頸管(子宮の出口)をしばることがあります。これを子宮頸管縫縮術といいます。
自覚症状としては、,お腹が定期的に張ったり痛んだりする、腰がだるい、おりものの異常(出血、おりものの突然の増加)などがあります。また、もっとも心配な症状として、破水することがあります。また自覚症状がなくても超音波検査をしたら早産の兆候があったという場合もあります。妊婦健診を受診した際に初めて気づかれることもあります。
子宮収縮抑制剤やステロイド
「切迫早産」の治療では,子宮口が開かないようにするために,子宮収縮を抑える目的で子宮収縮抑制薬(はりどめ)を使用することがあります.また、切迫早産の原因の一つでもある細菌による感染が疑われれば抗菌薬を使用することもあります.子宮収縮の程度が軽く,子宮口があまり開いていない場合は外来通院による治療でもいいのですが,子宮収縮が強く認められ、子宮口の開大が進んでいる状態では,入院して子宮収縮抑制薬の点滴治療を考慮します.生まれた後の赤ちゃんの状態をよくするために,ステロイドという薬をお母さんの体に使うことがあります。
子宮頸管縫縮術
症状がなく子宮口が開きやすい状態を「子宮頸管無力症」といいます.妊娠中期以降に現れることが多く,妊婦健診で発見される事が殆どです.前回の妊娠で頸管無力症と診断された方や,頸管無力症による流産・早産の経歴がある方は,次の出産でも子宮頚管無力症を繰り返す可能性があります.どんどん子宮口が開き、流産や早産になるので状況により頸管(子宮の出口)をしばることがあります。これを子宮頸管縫縮術といいます。子宮頸管縫縮術は,早産予防のメリットがありますが,流産を起すリスクもあり,手術の適応については慎重な検討が必要になります。
妊娠22週で生まれた場合,早産となりますが赤ちゃんの体重は500 g前後で長期間の新生児医療(新生児集中治療室での治療)が必要となり、また、早く生まれた赤ちゃんほど、後で重篤な障害が出現する可能性が高くなります.最近では、妊娠34週以降の正期産に近い時期の早産であっても、呼吸障害など長期に障害を残すことが報告されています。ですから、早産にならないように妊娠中、定期的な健診を受けていただき、早産になりやすい状況の早期診断と予防が必要になります.ちなみに早産は全妊娠の約5%に発生し、その原因は感染や体質によることが多いといわれています.切迫早産や早産の予防のためには、日頃から無理のない妊娠生活を心がけることが最も大切です.当院では妊婦健診の際にしっかりと評価を行い,お母さんの病状の説明やそれに合わせて適切な指導を行いますので,安心して健診を受けられて下さい。