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大腸がん

疾患の特徴

「大腸がん」は、大腸(結腸・直腸)に発生するがんで、腺腫という良性のポリープががん化して発生するものと、正常な粘膜から直接発生するものがあります。日本人ではS状結腸と直腸にがんができやすいといわれています。大腸の粘膜に発生した「大腸がん」は次第に大腸の壁に深く侵入し、やがて大腸の壁の外まで広がり腹腔内に散らばる腹膜播種を起こします。また、大腸の壁の中を流れるリンパ液に乗ってリンパ節転移をしたり、血液の流れに乗って肝臓、肺など別の臓器に遠隔転移したりします。

主な症状

「大腸がん」は、早期の段階では自覚症状はほとんどないですが、進行すると症状が出ることがあります。代表的な症状として、便に血が混じったり(血便)、貧血の症状(めまいなど)や、腸が狭くなることによる便秘や下痢、便が細くなる、残便感、腹部膨満感などの症状が起こったりすることもあります。さらに進行すると腸閉塞となり、排便停止、腹痛、嘔吐などの症状が起こります。また体重減少が起きることもあります。

治療法について
外科手術(開腹⼿術と腹腔鏡下⼿術)

⼤腸がんへの⼿術には、 腹部を⼤きく切開する開腹⼿術と、 腹部に開けた数か所の⼩さな⽳から内視鏡や⼿術器具をそれぞれ挿⼊して⾏う腹腔鏡下⼿術があります。 腫瘍の進展、 部位、 ⼤きさ、 既往 症、 併存疾患などを総合的に判断して、 患者さんにとって、 もっとも適切な⼿術⽅式を選択します。当院では腹腔鏡下⼿術を積極的に取り⼊れており、 約 9 0 % 以上で腹腔鏡下⼿術を⾏っています。

患者さんの体への負担が⼩さいとされる腹腔鏡下⼿術では、 内視鏡を操作し組織を拡⼤して⾒ることができるため、 細かい作業が可能であるといった利点があります。

当科では 2 名の内視鏡外科技術認定医を中⼼に、 安全で合併症の少ない⼤腸がん腹腔鏡⼿術の施⾏を⽬指します。

 

結腸がんの⼿術

結腸がんの⼿術では、腫瘍だけではなく、がんが広がっている可能性があるリンパ節などの周辺組織および周辺臓器も合わせて切除します。切除後は、残っている腸管同⼠を縫い合わせてつなぎ( 吻合)ます。

 

具体的には、 以下の術式があります。

結腸右半切除術

 

 横⾏結腸切除術

結腸部分切除術

S状結腸切除術

 

直腸がんの⼿術

直腸は肛⾨の直上から15cm程度奥の場所にあり、⾻盤に囲まれた狭い場所に位置すること、⽣殖器や泌尿器に関連した⾃律神経が存在していることなどから、結腸がんの⼿術に⽐べると難易度が⾼いとされています。術式としては以下のものがあります。

肛⾨温存

⾼位前⽅切除術︓直腸の腹膜反転部より上で腸をつなぐ⽅法。低位前⽅切除術︓直腸の腹膜反転部より下で腸をつなぐ⽅法。超低位前⽅切除術︓下部直腸の腫瘍に対し、肛⾨から2cm程度直腸を残して切除する⽅法

 

括約筋間直腸切除術( I S R )

肛⾨付近にある腫瘍を切除する術式です。肛⾨の開閉に必要な筋⾁のうち内肛⾨括約筋を⼀部切除しますが、その外側にある外肛⾨括約筋の切除は必要ないため、肛⾨を温存することができます。ただし、内括約筋の⼀部切除により、肛⾨機能がある程度低下することは避けられず、排便障害が⽣じることもあります

肛⾨⾮温存

腹会陰式直腸切断術( マイルズ⼿術)

肛⾨付近にある腫瘍を切除します。 直腸と合わせて肛⾨も切除し肛⾨部を縫合するため、 永久⼈⼯肛⾨( ストーマ) が必要となります。

 

⼤腸がん⼿術の合併症

⼤腸がん⼿術に伴う合併症の種類は様々で、出⾎、縫合不全、吻合部狭窄、膿瘍、腸閉塞、感染症、排便・排尿障害、性機能障害などが挙げられます。 ⼿術後に合併症が現れるかどうかは、 症状や選択した術式などによっても異なると考えられます。 直腸がん⼿術において縫合不全の合併症が⾼率となる可能性がある場合、⼀時的⼈⼯肛⾨( ストーマ) 造設術を併施する場合もあります。⼀時的⼈⼯肛⾨(ストーマ)は、3〜6ヶ⽉後に閉鎖することが多いです。

 

⼤腸がんに対する腹腔鏡下⼿術

腹腔鏡下⼿術は、カメラや器具を⼊れるための⼩さな⽳を腹部に数か所開けて⾏うため開腹⼿術に⽐べ創部が⼩さく、体にかかる負担を抑えることが可能です。

創が⼩さいことから⼿術跡の治りも早く、 そのため退院までの期間を短く済ますことができます。⽇常⽣活に戻るまでの期間を短縮できることはメリットと⾔えます。そのほか、 開腹⼿術より出⾎量が少ないことや、 術後の腸管運動の回復が早いことなどもメリットとして挙げられます。さらに、⼤腸の⼿術による合併症の 1 つである、 腸閉塞を起こす頻度が、 開腹⼿術に⽐べて少ないという研究報告もあります。

 

腹腔鏡下⼿術が困難な⼤腸がんとは︖

1 ) ⼼肺機能が低下している患者さんには適さない

腹腔鏡下⼿術では、 炭酸ガスを腹腔に注⼊し、 肺や⼼臓を押し上げて圧迫します。 そのため、 ⼿術を受ける患者さんの⼼臓や肺の機能が低下している場合には、 腹腔鏡下⼿術は困難になることがあります。

 

2 ) ⼤きいがんやステージ、 部位によっては難易度が⾼いことがある

⼿術によって取り出せる腫瘍の⼤きさは、 腹部に開けた傷の⼤きさに依存します。 つまり、 かなり⼤きな腫瘍の場合には、 その腫瘍を取り出すための切開が必要となり、 ⼩さい傷では対応できません。また、 がんの発⽣部位も、 腹腔鏡下⼿術の難易度に影響があります。 特に直腸や横⾏結腸に⽣じたがんの切除は難易度が⾼いとされるため、 腹腔鏡下⼿術に習熟した医師が⼿術を担当することが望ましいとされています。

 

当科では 2 名の内視鏡外科技術認定医を中⼼に、 上記の⾼難度腹腔鏡下⼤腸⼿術の担当をしております。 また超⾼難度⼿術症例においては、 関連病院より⼤腸がん⼿術のエキスパート医師を招聘し、 ⼿術のサポートに当たっていただくこともあります。

化学療法(抗がん剤治療 ・薬物療法)

当院では⼤腸癌治療ガイドラインに準じて、 術後補助化学療法、 切除不能進⾏再発⼤腸癌に対する化学療法を⾏っております。 定期的に多職種間の化学療法カンファレンスを⾏い、 患者さん⼀⼈⼀⼈にあわせた、 適切な治療を選択・実施するよう⼼がけております。

術後補助化学療法

根治切除が得られた症例に対して、 再発予防を⽬的とした術後補助化学療法を⾏います。がんの最終進⾏度(ステージ)に応じて3か⽉間または6か⽉間の化学療法を施⾏致します。(CAPOX/カペシタビン療法など)

切除不能進⾏再発⼤腸癌に対する化学療法

初回化学療法( 1 次治療) からまず⾏い、 効果がないもしくは耐性が⽣じた場合、 2 次、 3 次化学療法に移⾏していきます。 C A P O X 以外のレジメンは、 ⽪下に埋め込み型中⼼静脈ポートを留置して⾏われます。 以下に当院で主に施⾏される治療レジメンを記載いたします。

⼀次治療( 遺伝⼦変異・ 腫瘍局在などを考慮して下記治療レジメンから選択)

  • FOLFOX+セツキシマブ/パニツムマブ療法(RAS変異なし)
  • FOLFOX+ベバシズマブ療法CAPOX+ベバシズマブ療法
  • FOLFOXIRI+ベバシズマブ療法(BRAF変異あり)
  • ペンブロリズマブ(MSIhigh/dMMR)

2次化学療法(1次治療の無効な場合、下記治療レジメンから選択)

  • FOLFIRI+ベバシズマブ療法
  • FOLFIRI+ラムシルマブ療法
  • FOLFIRI+アフリベルセプト療法
  • セツキシマブ+ビニメチニブ±エンコラフェニブ(BRAF変異あり)
  • ペンブロリズマブ/ニボルマブ/ニボルマブ+イピリムマブ(MSIhigh/dMMR)

3次化学療法以降(これまでの治療で使われていない薬剤から選択)

  • パニツムマブ±イリノテカン(1次治療で未使⽤,RAS変異なし)
  • トリフルリジン・チピラシル±ベバシズマブ
  • レゴラフェニブ
  • ペルツズマブ+トラスツズマブ(HER2陽性)

外来での化学療法

副作⽤のコントロールが以前より良好となったため、多くの化学療法は外来で可能となっており、より⽇常⽣活と治療が両⽴しやすくなってきています。 医師・看護師・薬剤師・栄養⼠・ソーシャルワーカーなどがチームで患者さんを⽀えます。

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