胆のう炎
「胆のう炎」とは細菌が感染して胆のうに炎症が生じた状態です。胆のうがむくんで腫れ、炎症の進行とともに胆のうの壁が壊死に陥る場合もあります。急激におきるものを「急性胆のう炎」、良くなったり悪くなったりを繰り返すものを「慢性胆のう炎」といいます。
原因として多いのは、胆のう内に形成された結石(胆のう結石)が胆のうにはさまり、胆のうと胆管をつないでいる胆のう管が詰まってしまうことによって起こることがほとんどです。そのほかの原因としては、胆管の奇型や胆のうのねじれ(捻転)、周囲臓器の炎症や腫瘍による胆のう管の圧迫など、があります。しかし、胆のう管が詰まってしまうだけでは胆のう炎は起こりにくく、詰まってしまうことに加えて胆汁に細菌が感染したり、胆のう内に膵液が逆流したりすることにより、胆のう炎が引き起こされると考えられています。脂っこい食事が要因になったり、胃を手術した後に起きたりする場合もあります。
「胆のう炎」初期には上腹部の不快感や鈍痛で、炎症の進行とともに発熱がみられ、右季肋部痛(右の肋骨の下あたり)になり、次第に激痛になります。右肩の痛みがたまに現れる場合もあります。 さらに、症状が悪化すると、胆汁中で繁殖した細菌が血行性に全身に広がる敗血症、DIC(出血が止まらなくなる状態)を併発して、意識状態が悪くなったり、ショック状態(血圧が下がる)となることもあります。
保存的治療
① 検査結果と症状を総合して急性胆のう炎の診断と重症度が判定され、重症度に応じて治療が行われます。軽症と診断されれば、薬剤による保存的治療の適応となります。絶食下に点滴を行い、抗菌薬や鎮痛剤の投与などを行います。軽症であれば薬剤治療のみで回復する場合も多いので、特に過去に胆のう炎の治療歴のある方などは早めの受診と早期の治療開始が大切です。
経皮経肝胆のうドレナージ
胆のう内に感染した胆汁が溜まって胆のうがパンパンに腫れ上がる状態で、保存的治療のみでは困難と判断した場合には、胆嚢を針でさして膿を出す処置(経皮経肝胆のうドレナージ)が必要になります。超音波で確認しながら右腹部に局所麻酔をした状態で、超音波画像を見ながら穿刺針と呼ばれる針を皮膚→肝臓を経て肝臓の内側にある胆嚢まで刺し、胆嚢内に滞った胆汁を吸い出します。
そして、穿刺針からチューブ(カテーテル)へと置き換え、固定をし体外へ排出させます。このドレナージによって速やかに炎症の改善が得られる事が多いです。
腹腔鏡下胆のう摘出術
急性胆のう炎に対する胆のう摘出術は、症状が起こってからなるべく早い時期に手術を行うこと(早期手術)が推奨されていますが、重症度や合併する病気などの理由により、症状が軽快してから待期的に手術を行うこともあります。当院では身体に優しい低侵襲の治療を目指し、ほぼすべての症例で腹腔鏡下胆のう摘出術(詳しい内容は胆石症の項目をご参照ください)を行っています。