鼠径部ヘルニアとは
鼠径部(足の付け根)の弱くなった腹壁の一部から腹腔内臓器(腸管や内臓脂肪など)が飛び出す病態で、いわゆる「脱腸」のことです。
①皮膚 ②筋肉・筋膜 ③腹膜 ④腸管 〇ヘルニア門
図1. 鼠径部ヘルニア(嵌頓)
加齢とともに腹筋が弱くなったり、お腹に力がかかりやすい状態(お腹に力のかかる仕事、肥満、妊娠、喘息、慢性肺疾患など)が続いたりするとなりやすいと言われています。
鼠径部ヘルニアは時に緊急手術が必要となったり、経過により重症となったりすることがあります。その多くはヘルニア門が狭く、脱出した腸管が元に戻らなくなる「嵌頓(カントン)」によってひきおこされます。嵌頓腸管が閉塞して、壊死を来すことがあり、腫れが収まらず強い痛みと嘔吐を伴って、緊急手術が必要となる場合があります。
鼠径部ヘルニアの当院での治療方法
成人のヘルニアの場合、自然治癒は期待できず手術でしか根治できません。
当院では鼠径部アプローチと腹腔鏡アプローチのどちらかで手術を計画します。
鼠径部アプローチ
腰椎麻酔下に鼠径部に切開を置き、前方からヘルニアを修復する手術です。メッシュを用いず、自身の組織を利用して修復する方法もありますが、組織が引き連れたりすることでツッパリ感や疼痛が出現することが多いとされ、メッシュを用いた修復法が推奨されます。
図2. 鼠径部アプローチ皮膚切開
図3. ウルトラプロ®プラグ(UPP)とメッシュ留置部
図3. ウルトラプロ®ヘルニアシステム(UHS)とメッシュ留置部
腹腔鏡アプローチ
全身麻酔下にお腹に3か所の小さな傷で腹腔内にカメラと鉗子を挿入し、お腹の中の映像をテレビモニターで見ながら手術する方法です。腹腔内よりメッシュを留置しますが、当院ではTAPP法を採用しております。鼠径部アプローチと比べて、1つ1つの傷が小さく疼痛が少ないと言われており、早期社会復帰を期待できます。当科では年々腹腔鏡アプローチの手術件数が増加しており、安全で合併症の少ない手術を心がけております。
図4. 腹腔鏡アプローチ皮膚切開
図5. バード® 3D Max®とパリテックス™ ラップ プログリップ™のメッシュ留置部
鼠径部ヘルニア手術のおおまかな費用 (食事代・個室代・自費等除く)
70歳未満の患者様の場合
70歳~74歳の患者様の場合
75歳以上の患者様の場合