胃癌は、深達度(T、深さ)とリンパ節転移(N)からステージ(Stage)が決まります(図1,2)。胃癌は粘膜Mの層から発生し、その深達度は6層あり、内側から順に粘膜M、粘膜下層SM、固有筋層MP、漿膜下層SS、漿膜SE、他臓器浸潤SIに分けられます。StageはI~IVまであります。
当院では早期癌のみならず、進行癌に対しても可能な限り腹腔鏡手術を行うようにしており、その定型化に取り組んでいます(当科での胃切除手術件数は表1をご覧下さい)。開腹手術と腹腔鏡手術で切除範囲やリンパ節郭清程度はかわらず、腹腔鏡手術でも根治性の高い手術を目指しています。
腹腔鏡手術では、まずお腹を二酸化炭素ガスで膨らませ、小さな穴を5個開けてそこから腹腔鏡カメラや手術器具を挿入します。腹腔鏡カメラの映像をモニターに映し出して、胃や周囲リンパ節の切除、再建(胃と十二指腸をつないだり、食道と空腸をつないだり)を行います。高画質の3Dカメラを使用しており、拡大された鮮明な画像により、従来の開腹手術では見えにくかった細かい血管や神経線維まで認識することができ、繊細で丁寧な手術を行うことができます(図3)。腹腔鏡手術は傷が小さいため、術後の痛みが少なく回復が早いのも特徴です。
a:右胃大網動脈の切離
b:十二指腸の切離
c:左胃大網動脈の切離
d:左胃動脈の切離
胃切除術式は、胃癌の発生部位により異なります。胃の出口側の癌に対しては幽門側胃切除(再建方法はデルタ吻合やR-Y再建、図4,5,6)が、胃の入口側の癌に対しては胃全摘(再建方法はR-Y再建、図7,8)や噴門側胃切除(再建方法は観音開き再建、図9)を行っています。
胃癌は腹膜播種(腹膜への転移)や腹水細胞診(癌細胞が腹水中に浮遊している)が陽性になることが多い癌腫です。当科ではその有無を判断するために、審査腹腔鏡を行い、その結果に基づいて治療方針を決定しています(図10)。
また手術のみならず、術前後の抗癌剤治療にも力を入れています。抗癌剤により切除不可能だった癌が切除可能になる(conversion)こともありますし、切除不可能であっても抗癌剤治療によって予後の延長を目指します。
最終更新:2024年3月18日